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「いや、もう御免蒙つて脱いで行かう」
足が冷えて来たので、風呂の火でも見ようと立ち上つた時だつた、裏口の戸がゆつくりと外から開いた。
あまり立てつゞけに挨拶したので、疲くたびれ、いくらか器械的にだが形だけは実直に頭を下げた直造は、稍かすんだ眼で今迎へたばかりの客を見た。
房一は前の方を向いたまゝだつた。
夜になるとその谷間は真黒な闇に呑まれてしまう。闇の底をごうごうと溪たにが流れている。私の毎夜下りてゆく浴場はその溪ぎわにあった。
と、房一を誘つていた。
このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。
「先生!」
と訊いた。
徳次は足を踏ん張つて立ち、まだそこら中を見まはしていた。房一はちらりとその顔を見たが、黙つて片づけていた。
熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。
疲労したあまり不機嫌になつた大石練吉は、手荒く疳性かんしやうに衣裳をくるくると巻きながらいつもよりも激しくその切れ目をぱちぱちさせて云つた。
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」